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81話 惨めな自分

Penulis: ニゲル
last update Terakhir Diperbarui: 2025-06-21 09:40:24

「あははは!! 変身してないとこんな豆腐みたいに切れるんだね!!」

奴は無邪気に、テストで高得点を取った子供のように喜び跳ねる。神奈子は声すらも上げられず、その場に崩れ傷口を抑え苦悶の表情を浮かべる。

「これで二つ……あたし達の勝利も確実に……」

神奈子が殺される。だというのに体が動かない。庇うことも逃げることも。

完全に諦めてしまい殺される様子を見るだけかと思ったが、次の瞬間メサの体は吹き飛ばされて木に激突していた。

「いててて。げっ、この触手は……」

奴が居た場所には巨大な美しい触手が振り下ろされていた。その風圧で落ちた腕は転がり神奈子は力なく倒れ動かなくなる。

「神奈子!! この腕……」

生人さんがギリギリ間に合ってくれた。彼なら変身せずとも人間態のメサを撃破できるはずだ。

「ちっ、覚えてろよキュアヒーローども!!」

しかしメサは怪人態になることなく一目散に逃げていく。

「うぐぅ……」

神奈子が呼吸を荒くさせ小さく呻く。酷い出血量だ。すぐに手当てしなければ死んでしまう。

わたしも手伝った方が良いと、動けるわたしも彼女の手当てに向かうべきだと頭では分かっていた。だが足が動かない。未だに震えて立てない。

「神奈子!! 橙子!! 大丈夫なのだ!?」

リンカルが駆けつける。配信開始時点から全速力で向かっていたのだろう。すぐに手当てできるよう散布薬と痛み止めを既に手に持っている。

「薬じゃ治せない!! 今はいいから痛み止めを!!」

神奈子は錠剤をリンカルから飲まされて幾分か顔色がマシになる。それでも出血は止まらず死に追いかけられる。

「切り口が綺麗だからまだ十分繋がる……痛み止めがあってもキツイと思うけど、少しの辛抱だからね」

生人さんは腕の傷口に細い触手を数本入れ、それを溶接するかのように彼女にくっつける。

「あがっ……あぁぁぁぁ!!!」

溶接した瞬間神奈子は激痛に大声を上げる。傷口から鳴るグチュグチュという不快な音。こちらまで痛みが伝わってくる。

生人さんに体を抑えられ、足をバタつかせ必死に痛みと戦う。その甲斐もあり彼女はなんとか傷を治すが、あまりの痛みに気を失ってしまう。

「橙子……こっちは散布薬でなんとかなるのだ……良かったのだ」

わたしはリンカルに衣服をめくられ薬をかけられる。こ
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  • 高嶺に吹く波風   76話 ゲームに踊らされ

    「ねぇねぇ酷いよねみんな。波風ちゃんを居ないように扱って……」 「あ、あぁそうだな。いじめなんて許せないよな」 とりあえず天空寺を錯乱させないために話を合わせておく。帰り道歩いている間ずっと誰も居ない方に話しかけており、隣を通った人などから奇異の目で見られるが彼女は気にも留めない。周りが一切見えておらず、自分と幻覚の親友の世界に入り込んでいる。 本当に隣に大親友がいるかのように、口を休める間もなくずっと話し続ける。こちらにも偶に振られるが、短く適当な返ししかできない。アタイには海原の言っていることなど一切分からないのだから。 「やっぱり健橋先輩は義理堅くて優しいなぁ。でしょでしょ……あ、確かに! そういうところあるよね先輩は!」 「そ、そうだな……あはは」 アタイ達はこんな不気味な二人三脚をしながら同じ制服の子らと逆の道を辿る。 そうこうしないうちに天空寺家まで着きアタイは彼女の部屋に上げてもらう。 「うっ……!?」 部屋の中は目も当てられない有り様だった。散らかり具合もそうだが、ところどころ血痕が付着していたり引き裂かれたぬいぐるみだったり。痛々しく目も当てられない。 「ごめんね先輩。ちょっと散らかってて。今片付けるから」 割れた花瓶の破片を蹴り隅に寄せ、そこに血液が付着したバラバラのぬいぐるみを次々に放り捨てる。 「さ! 三人でゲームでもしよ!」 「そう……だな」 今すぐにここから逃げ出したかった。もう見ているだけで辛い。こっちまで心が壊れそうになる。 だが天空寺を放っておくわけにもいかない。アタイは渡されたコントロールを握り、二人でパーティーゲームを始める。 「モードは三人でNPCが一人になっちゃうけど……」 彼女はぶつぶつと呟きながらゲーム設定やキャラ選択を進めていく。画面にはプレイヤー二人にNPCが二人と機械らしく残酷な現実を容赦なく突きつけてくる。 「あ〜えっと、あの水色の服のと紫色の、どっちが波風なんだ?」 「……」 天空寺は何も返答しない。黙ってカタカタとコントローラーを操作する。 「ねぇ先輩。波風ちゃんのこと無視しないでよ」 手をピタッと止め、声のトーンを二段階下げて光のない瞳をこちらに向ける。 「えっ、あ、すまない聞き逃してた。そうかキャラの下の方にちゃんと書いてあったなすま

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